脊髄損傷患者にとって遠隔リハビリは有用か、どのように体験されるか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:脊髄損傷患者にとって遠隔リハビリは有用か、どのように体験されるか?
  • 英語タイトル:Exploring the experience and needs of telerehabilitation in patients with spinal cord injury: a systematic review and thematic synthesis of qualitative research.

ここで取り上げる内容は、リハビリテーション科や整形外科の外来で、脊髄(せきずい:背骨の中を通る太い神経の束)のけがをされた方を診るときに、よく問題になるテーマです。
専門的な話も出てきますが、できるだけ日常の言葉に置きかえてお話ししていきます。

目次

研究の背景・目的

脊髄損傷(spinal cord injury:背骨の中の神経が傷つくけが)のある方では、長い期間にわたってリハビリテーション(rehabilitation:体の機能や生活動作をできるだけ取り戻すための訓練)を続けることが、体の機能を保つことや、生活の質(Quality of Life:QOL、毎日の生活の満足度や過ごしやすさ)を保つうえで大切とされています。
一方で、病院や施設に通うこと自体が大きな負担になることも多くあります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以降、自宅と病院をオンラインでつなぐ「遠隔リハビリテーション(telerehabilitation:テレビ電話などを使ったリハビリ)」のニーズが急に高まりました。
そこで、この研究では、脊髄損傷のある患者さんが遠隔リハビリをどのように体験しているのか、どんな点で助けになり、どんな点で困っているのかといった「経験」と「必要としていること(ニーズ)」を整理することが目的とされました。

調査の方法(対象など)

研究者たちは、医学論文が集められている6つのデータベース(論文検索サイトのようなもの)を、決まった手順にしたがって広く検索しました。
その中から、脊髄損傷のある患者さんが遠隔リハビリを受けたときの体験を詳しく聞き取ってまとめた「質的研究(qualitative research:数字ではなく、患者さんの声や感想を中心に分析する研究)」15本を対象にしました。
それぞれの研究の質(信頼できる内容かどうか)については、JBI(Joanna Briggs Institute、ジョアンナ・ブリッグス研究所:オーストラリアにある、医療研究の評価方法などを作っている機関)の評価ツールを使ってチェックしました。

研究の結果

遠隔リハビリは、通院がむずかしい脊髄損傷の患者さんにとって、新しいリハビリの受け方の一つになっていました。
自宅にいながらリハビリを続けられることや、画面越しでも専門職とつながっていることで、心理的な支え(気持ちの面での安心感)につながっているという声がありました。
一方で、インターネット回線が不安定で映像や音声が途切れてしまうこと、機器の操作に自信が持てないこと、画面越しでは細かい体の状態を評価しにくいと感じることなど、いくつかの障害(ハードル)もはっきりしてきました。

結論:今回の研究でわかったこと

脊髄損傷のある患者さんにとって、遠隔リハビリは、自宅でリハビリを続けやすくしたり、専門職とつながっているという安心感を高めたりする面があると整理されました。
その一方で、通信機器やインターネットのトラブルといった技術的な問題や、画面越しでは一人ひとりの状態に十分合わせきれないと感じる場面があることが課題として挙げられました。
そのため、遠隔リハビリを行う前に、患者さんごとの希望や困りごと(ニーズ)をよく把握し、それに合わせて技術面やサポート体制をあらかじめ整えておくことが大事なポイントとされています。

実際の診察ではどう考えるか

外来などで遠隔リハビリを取り入れるときには、まず患者さんの生活の状況(家族構成、住環境、通院手段など)や、遠隔でのやり取りに対する不安や心配ごとを、時間をかけて丁寧にうかがうことが大切になります。
そのうえで、オンラインでのリハビリだけに頼るのではなく、必要に応じて対面での評価や診察も組み合わせる「ハイブリッド運用(オンラインと対面を組み合わせる方法)」を、患者さんと相談しながら設計していくことが重要だと考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科 院長 佐藤洋一

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

経歴

  • 東海高等学校 卒業
  • 三重大学医学部医学科 卒業
  • 名古屋第二赤十字病院 初期研修
  • 名古屋大学整形外科学教室 入局
    • 名古屋第二赤十字病院、蒲郡市民病院、JCHO東京新宿メディカルセンター
    • 骨折治療・人工関節(TKA、THA)・骨粗鬆症を中心に従事。
  • 専門機関における勤務
    • 足と歩行のクリニック(米国式足医療)
    • 善常会リハビリテーション病院(脳神経リハビリ)
    • もり在宅クリニック(在宅医療)
    • スマートクリニック、元八事整形外科形成外科(一般整形外科、再生医療)
  • SBI大学院大学 経営学修士(MBA) 修了予定
  • Yoリハビリ整形外科 開院予定

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