高齢者大腿骨近位部骨折後、どの地域リハ戦略が機能回復に最も有効か?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:高齢者大腿骨近位部骨折後、どの地域リハ戦略が機能回復に最も有効か?
  • 英語タイトル:Comparative effectiveness of community-based rehabilitation programs on functional recovery after hip fracture in older adults: a systematic review and network meta-analysis.

ここで取り上げるのは、「大腿骨近位部骨折」という、いわゆる太ももの付け根の骨折をした高齢の方が、手術のあとにどのようなリハビリを受けると動きや生活機能が戻りやすいか、というテーマです。
ふだん整形外科やリハビリテーション科の診療でよく問題になる内容ですが、できるだけ専門用語をかみくだいてお話ししていきます。

目次

結論からお伝えします(今回の研究でわかったこと)

全部で12本の「ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT、治療法をくじ引きのように分けて公平に比べる研究)」に参加した1,510人分のデータをまとめて調べても、「この地域でのリハビリ方法が一番良い」とははっきり決められなかったという結果でした。
医師・看護師・理学療法士など複数の職種がチームで関わる「多職種包括ケア(Multidisciplinary Care:MDC、多職種で連携して行う包括的なケア)」や、自宅で行う運動プログラム「自宅運動(Home Exercise:HomeEx、自宅で続けるために組まれた運動メニュー)」は、ふだん行われている「通常ケア(Usual Care:UC、その地域や施設で一般的に行われている標準的なケア)」よりも、機能回復が良さそうな傾向はありました。
ただし、統計的に「はっきり差がある」とまでは言えず、証拠の確かさを評価する指標である「GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation:医学研究の結果の信頼性を段階的に評価する方法)」では、信頼性が最も低いとされる「very low(とても低い)」と判断されています。

この結果は何を意味するのか

この研究で対象となったのは、60歳以上で「大腿骨近位部骨折(Hip Fracture:太ももの付け根の骨折)」の手術を受けた方たちです。
12本のランダム化比較試験(RCT)をまとめ、合計1,510人分のデータを解析しています。
比べたリハビリの方法は、次の4つです。
1つ目は「多職種包括ケア(Multidisciplinary Care:MDC)」で、医師・看護師・リハビリスタッフ・ソーシャルワーカーなど、いろいろな職種がチームになって、医療や生活面を含めて総合的に支えるやり方です。
2つ目は「自宅運動(Home Exercise:HomeEx)」で、退院後に自宅で続けられるように組まれた運動プログラムです。
3つ目は「注意対照(Attention Control:AC)」と呼ばれる方法で、リハビリの内容そのものは変えずに、面談や電話などで患者さんへの関わりの回数や時間をそろえて比べるやり方です。
4つ目が「通常ケア(Usual Care:UC)」で、その地域や施設でふだん行われている標準的なリハビリやフォローを指します。
これら4つの方法を互いに比較して、どれが機能回復により効果的かを検討した研究になります。

注意点・限界

今回の研究では、「ネットワークメタ解析(Network Meta-analysis:NMA、複数の治療法を同時に比較できる統計手法)」という方法を使っています。これは、直接比べていない治療同士も、共通の比較対象を通じて間接的に比べられるという特徴があります。
このネットワークメタ解析の結果では、多職種包括ケア(MDC)や自宅運動(HomeEx)、注意対照(AC)は、どれも通常ケア(UC)と比べると、機能回復がやや良い方向にあるように見えました。
ただし、その差は統計学的に「有意(ゆうい:偶然では説明しにくい、とはっきり言える状態)」とまでは言えず、さらにネットワーク全体で、研究結果同士の食い違い(不一致)が大きいという問題もありました。
そのため、「この方法が明らかに一番良い」とまでは結論づけられず、結果の解釈には慎重さが必要とされています。

実際の診察ではどう考えるか

現時点の研究結果だけを見ると、「この地域リハビリのやり方が絶対に一番良い」とは言い切れません。
ですので、実際の診療では、患者さんそれぞれの年齢、持っている病気、家族のサポート状況、自宅の環境、その地域で利用できるサービス(訪問リハビリや通所リハビリなど)の有無といった背景を踏まえて、リハビリの内容を個別に組み立てていくことが大切だと考えられます。
また、医療機関としては、自分たちの施設で行っているリハビリの結果(歩ける距離、日常生活動作の回復具合、再入院の有無など)を継続的に記録・評価し、まだはっきりしていない部分(エビデンスギャップ)を少しずつ埋めていく姿勢が重要とされています。


参考文献

  • Comparative effectiveness of community-based rehabilitation programs on functional recovery after hip fracture in older adults: a systematic review and network meta-analysis.

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41486115/


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科 院長 佐藤洋一

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

経歴

  • 東海高等学校 卒業
  • 三重大学医学部医学科 卒業
  • 名古屋第二赤十字病院 初期研修
  • 名古屋大学整形外科学教室 入局
    • 名古屋第二赤十字病院、蒲郡市民病院、JCHO東京新宿メディカルセンター
    • 骨折治療・人工関節(TKA、THA)・骨粗鬆症を中心に従事。
  • 専門機関における勤務
    • 足と歩行のクリニック(米国式足医療)
    • 善常会リハビリテーション病院(脳神経リハビリ)
    • もり在宅クリニック(在宅医療)
    • スマートクリニック、元八事整形外科形成外科(一般整形外科、再生医療)
  • SBI大学院大学 経営学修士(MBA) 修了予定
  • Yoリハビリ整形外科 開院予定

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次