脊髄損傷患者の下肢リハにtSCSは本当に有効か?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:脊髄損傷患者の下肢リハにtSCSは本当に有効か?
  • 英語タイトル:Effectiveness of transcutaneous spinal cord stimulation for lower limb rehabilitation in spinal cord injury: a systematic review.

ここで取り上げるのは、脊髄(せきずい:背骨の中を通る太い神経)をけがした方の、足のリハビリテーションに関する話題です。ふだんのリハビリや整形外科の診療でもよく出てくるテーマなので、専門的な内容ではありますが、できるだけ日常の言葉でお伝えしていきます。

目次

結論からお伝えします(今回の研究でわかったこと)

tSCS(transcutaneous spinal cord stimulation:経皮的脊髄刺激。皮ふの上から電気を流して脊髄を刺激する治療)は、足の動きの機能や歩く速さを「少し良くする可能性がある」という結果でした。ただし、今ある研究の質はあまり高くなく、「はっきり有効と言い切れる段階ではない」という評価になっています。

この結果は何を意味するのか

今回まとめられたのは、成人のSCI(spinal cord injury:脊髄損傷)の方を対象にした研究で、全部で14本、合計183人分のデータでした。この中には、RCT(Randomized Controlled Trial:無作為化比較試験。患者さんをくじ引きのように分けて、新しい治療と従来の治療を公平に比べる研究)も5本含まれていました。ただし、それらを合わせて評価しても、「効果が本当にある」と自信を持って言えるほどの確実さには達していない、という判断になっています。

注意点・限界

質の高いRCTが1本あり、その研究では、LEMS(Lower Extremity Motor Score:下肢運動スコア。足の筋力を点数化したもの)と10MWT(10 Meter Walk Test:10m歩行テスト。10メートルを歩く速さをみる検査)は良くなっていました。一方で、6MWT(6 Minute Walk Test:6分間歩行テスト。6分間でどれくらい歩けるかを見る検査)と、痙縮(けいしゅく:筋肉がつっぱったり、勝手にこわばったりする症状)については、はっきりした差は出ていませんでした。このように、良くなっている項目と、差が出ていない項目がある点には注意が必要です。

実際の診察ではどう考えるか

tSCSは、手術のように体を切るわけではなく、皮ふの上から電気を流す方法なので、体への負担(侵襲)は比較的少ない治療法と考えられます。現時点では、標準的なリハビリテーションを置き換えるものではなく、「今行っているリハビリに追加してみる補助的な選択肢」として位置づけるのが現実的と思われます。そのうえで、実際にどのくらい効果があるのか、安全性はどうかといったデータを、今後も積み重ねていくことに意味があると考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール

Yoリハビリ整形外科 院長 佐藤洋一

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

経歴

  • 東海高等学校 卒業
  • 三重大学医学部医学科 卒業
  • 名古屋第二赤十字病院 初期研修
  • 名古屋大学整形外科学教室 入局
    • 名古屋第二赤十字病院、蒲郡市民病院、JCHO東京新宿メディカルセンター
    • 骨折治療・人工関節(TKA、THA)・骨粗鬆症を中心に従事。
  • 専門機関における勤務
    • 足と歩行のクリニック(米国式足医療)
    • 善常会リハビリテーション病院(脳神経リハビリ)
    • スマートクリニック、元八事整形外科形成外科(一般整形外科)
    • もり在宅クリニック(在宅医療)
  • SBI大学院大学 経営学修士(MBA) 修了予定
  • Yoリハビリ整形外科 開院予定

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