この記事の要点
- 日本語タイトル:脳卒中後嚥下障害に呼吸−嚥下協調トレーニング併用は有効か?
- 英語タイトル:Respiratory-swallow coordination training using bimodal signal biofeedback for patients with post-stroke dysphagia: a randomized controlled trial.
ここで取り上げるのは、脳卒中(脳の血管が詰まったり、破れたりする病気)のあとに起こる「嚥下障害(えんげしょうがい:食べ物や飲み物をうまく飲み込めない状態)」に対するリハビリの話です。
ふだんリハビリテーション科や整形外科の外来でもよく関わるテーマなので、専門用語はできるだけかみくだいてお伝えします。
結論からお伝えします(今回の研究でわかったこと)
2週間、「呼吸−嚥下協調トレーニング(こきゅうとえんげのタイミングを合わせる練習)」を、いつもの嚥下リハビリに追加したところ、
・FOIS(Functional Oral Intake Scale:経口摂取機能尺度。どのくらい口から食べたり飲んだりできているかを7段階で評価する指標)の改善量が大きくなったこと
・PAS(Penetration-Aspiration Scale:誤嚥の程度を8段階で評価する指標)で6以上となる、重めの誤嚥にあたる状態の頻度が減ったこと
が示されました。
この効果は、少なくとも1か月程度は続いている可能性があると報告されています。
この結果は何を意味するのか
対象となったのは、脳卒中のあとに嚥下障害がある患者さん30人です。
この方たちを、
・「通常の嚥下リハビリだけを行うグループ」
・「通常の嚥下リハビリに加えて、呼吸−嚥下協調トレーニングも行うグループ」
の2つに、くじ引きのような方法(ランダム割付:研究の偏りを減らすための方法)で分けました。
どちらのグループも、1日30分、週6日というペースで、2週間リハビリを行いました。
注意点・限界
経口摂取レベルを表す指標であるFOIS(Functional Oral Intake Scale、経口摂取機能尺度)は、どちらのグループでも2週間のリハビリで有意に改善していました。
そのうえで、呼吸−嚥下協調トレーニングを併用したグループのほうが、2週後と1か月後のどちらの時点でも、FOISの改善の幅が統計学的にみて有意に大きかったと報告されています。
ただし、対象者が30人と多くはないことなどから、すべての脳卒中後嚥下障害の方に同じように当てはまるかどうかは、今後の検討が必要と考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
呼吸−嚥下協調トレーニングでは、「息を吸う・吐く」と「飲み込む」のタイミングを、機械などを使って目で見える形(バイオフィードバック:体の状態をモニターして本人に見せる方法)にしながら練習します。
このように、呼吸と嚥下のタイミングを意識しやすくしながら訓練することで、比較的短い期間でも、FOISの改善(口から食べたり飲んだりできるレベルの向上)と、PASの高い値(重めの誤嚥)の減少を同時に目指せる介入となる可能性があると考えられています。
参考文献
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Respiratory-swallow coordination training using bimodal signal biofeedback for patients with post-stroke dysphagia: a randomized controlled trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41466097/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

