この記事の要点
- 日本語タイトル:高齢フレイルは構造化運動療法で逆転可能か?
- 英語タイトル:Reversing frailty: The transformative effects of structured physical-activity-based physiotherapy on physical, cognitive and emotional health in older adults-An evidence-based systematic review.
ここで取り上げる「フレイル(Frailty:加齢に伴う心身の虚弱状態)」については、外来でもよくご質問をいただきます。
この記事では、医学論文の内容をもとに、「構造化された運動プログラム(あらかじめ内容や回数、強さが計画された運動療法)」がフレイルにどのような影響を与えるかを、できるだけ専門用語をかみくだいてお話しします。
結論からお伝えします(今回の研究でわかったこと)
今回の研究では、「構造化された理学療法プログラム(Physiotherapy:理学療法士が関わる計画的な運動プログラム)」を行うことで、フレイルの状態が高齢の方のおよそ半分で改善する可能性があると報告されています。
さらに、筋力(筋肉の力)だけでなく、転倒のしやすさ(転倒リスク)、もの忘れなどに関わる認知機能(Cognitive function)、気分や不安などの感情面(Emotional health)にも、幅広く良い変化がみられる可能性が示されています。
この結果は何を意味するのか
研究で中心となっていたのは、「抵抗トレーニング(Resistance training:重りを使った運動や自重トレーニングなど、筋肉に負荷をかけて鍛える運動)」が主体のプログラムです。
このような運動を続けることで、筋力が高まり、それに伴って、60歳以上の高齢の方におけるフレイルの指標(フレイルかどうかを評価する点数や基準)が、およそ20〜35%ほど低下する可能性があるとされています。
つまり、適切に計画された筋力トレーニングを取り入れることで、フレイルの程度が軽くなる人が一定数いる可能性がある、という意味合いになります。
注意点・限界
この研究では、「バランス訓練(Balance training:片足立ちや不安定な場所での立位練習など、ふらつきを減らすための運動)」と「有酸素運動(Aerobic exercise:ウォーキングや自転車こぎなど、呼吸と心拍数が少し上がる程度の持続的な運動)」を組み合わせることも重要とされています。
これらを併用することで、転倒リスクが約25〜35%減る可能性があり、さらに歩く速さ(歩行速度)が上がることで、着替えやトイレ、買い物などの日常生活を自分で行う力(自立度)が良くなる可能性が示されています。
ただし、あくまで研究の結果であり、すべての方に同じ効果が出るとは限らないこと、体力や持病によってできる運動の内容や強さが変わることには注意が必要です。
実際の診察ではどう考えるか
診察室で運動の相談を受けたとき、「これだけやればよい」という一つの運動だけをおすすめするというよりは、いくつかの要素を組み合わせることを考えます。
具体的には、筋力をつける抵抗トレーニング、ふらつきを減らすバランス訓練、持久力を高める有酸素運動を、無理のない範囲で組み合わせた「構造化プログラム(内容・回数・強度を計画した運動メニュー)」が、フレイルの進行をゆるやかにしたり、状態を改善させたりするうえで大切なポイントになると考えられます。
実際に行う際には、主治医や理学療法士と相談しながら、その方の体力や病気の状態に合ったプログラムを一緒に決めていくことが重要です。
参考文献
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Reversing frailty: The transformative effects of structured physical-activity-based physiotherapy on physical, cognitive and emotional health in older adults-An evidence-based systematic review.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41427921/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

