この記事の要点
- 日本語タイトル:股関節屈筋柔軟性の徒手検査はどこまで信頼できるのか?
- 英語タイトル:Reliability of physical examination tests for assessing hip flexor flexibility: A systematic review and meta-analysis.
このテーマは、診察のときに「このストレッチの検査って、どれくらい正確なんですか?」とよく聞かれる内容です。ここでは、できるだけ専門用語をかみくだいて、日常の言葉に近い形でお話ししていきます。
結論からお伝えします(今回の研究でわかったこと)
股関節屈筋(こかんせつくっきん:太ももの付け根の前側にある、股関節を曲げる筋肉)の柔らかさをみる検査は、同じ検査者がくり返し行ったときの「同一検者内信頼性」がとても高く、検査者が違っても「検者間信頼性」もおおむね良いとされています。一方で、よく使われるThomas Test(トーマス・テスト)やModified Thomas Test(モディファイド・トーマス・テスト)は、やり方の細かい違いが大きく、検査の手順を標準化(どこでも同じ方法で行えるように決めておくこと)しておくことが重要とされています。
この結果は何を意味するのか
今回の研究では、全部で27本の研究、合計1056人分のデータをまとめて、股関節屈筋の柔らかさをみる検査の「信頼性(どれくらい安定して同じ結果が出るか)」を調べています。ここで使われている指標が級内相関係数 ICC(Intraclass Correlation Coefficient:きゅうないそうかんけいすう)という統計の数字で、0〜1のあいだの値をとり、1に近いほど「結果がよくそろっている=再現性が高い」と解釈されます。このICCが、同じ検査者がくり返し測った場合には0.90、検査者が違う場合でも0.80と高い値で、股関節屈筋の柔軟性を評価する方法として、再現性が高いと考えられています。
注意点・限界
その一方で、Thomas TestとModified Thomas Testに限ってみると、検査者が違う場合のICCが0.62と、ほかの検査より低めの値になっており、研究ごとの結果のばらつきも非常に大きいとされています。これは、検査を行うときのベッドの高さ、骨盤(こつばん:腰のあたりの骨)の固定の仕方、膝(ひざ)をどれくらい曲げるかといった条件の違いによって、結果が変わりやすいことが影響していると考えられます。そのため、この検査を使うときには、手順をできるだけ厳密にそろえることが必要とされています。
実際の診察ではどう考えるか
股関節屈筋の柔らかさを、リハビリの経過観察などで何度も測っていく場合には、同じ検査者が、毎回できるだけ同じ条件で測定することが大切になります。Thomas Testなどの「Thomas系」の検査を使う場合には、骨盤をどう固定するか、膝をどの角度まで曲げるかといった細かい点を、病院や施設の中であらかじめ決めておき、記録の仕方も含めて「プロトコル(手順書)」として統一しておくことが望ましいとされています。
参考文献
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Reliability of physical examination tests for assessing hip flexor flexibility: A systematic review and meta-analysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41420517/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

