この記事の要点
- 日本語タイトル:人工膝関節置換術後の疼痛はLIA単独とACB併用のどちらが有効か?
- 英語タイトル:Comparative Efficacy of Adductor Canal Block in Total Knee Arthroplasty: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.
ここで取り上げる内容は、人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA、すり減った膝の関節を人工の関節に入れ替える手術)のあとに出てくる痛みについてです。
リハビリテーション(機能回復のための訓練)や整形外科の外来で、日常的によく問題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけかみくだいてお話しします。
研究の背景・目的
人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)のあとに出る痛みは、手術後すぐに始まるリハビリの進み具合や、患者さんご自身の満足度に大きく関係します。
これまでの方法として、大腿神経ブロック(Femoral Nerve Block:太ももの前を通る大腿神経の周りに局所麻酔薬を注射して痛みを抑える方法)が使われてきましたが、この方法では太ももの筋力が一時的に弱くなりやすく、立ち上がりや歩行のリハビリに影響することが問題とされています。
そのため、筋力をできるだけ保ちながら、手術後の痛みをどのように抑えるかが、この研究の目的になっています。
調査の方法(対象など)
この研究では、人工膝関節置換術(TKA)を受けた患者さんを対象に、2つの痛み止めの方法を比べています。
1つはLIA(Local Infiltration Analgesia:局所浸潤鎮痛、手術中に膝の周りの組織に直接、局所麻酔薬などを注射して痛みを抑える方法)だけを行うグループです。
もう1つは、そのLIAに加えてACB(Adductor Canal Block:内転筋管ブロック、太ももの内側にある「内転筋管」というトンネル状の部分に局所麻酔薬を注射し、膝周りの痛みを抑える方法)を併用するグループです。
これら2つの方法を、ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT、患者さんをくじ引きのように無作為に分けて、公平に効果を比べる研究方法)で比較しています。
研究の結果
LIAにACB(内転筋管ブロック)を併用したグループでは、LIAだけのグループと比べて、手術後24〜48時間のあいだの「じっとしているときの痛み」と「動いたときの痛み」の両方が弱くなっていました。
また、強い痛み止めであるオピオイド(Opioid:モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬)の使用量も少なくてすんでいました。
結論:今回の研究でわかったこと
人工膝関節置換術(TKA)のあとの痛みについて、LIA(局所浸潤鎮痛)だけの場合と比べると、LIAにACB(内転筋管ブロック)を併用したほうが、手術後24〜48時間のあいだの痛みをよりよく抑えられていた、という結果でした。
この時間帯の鎮痛効果は、ACBを併用したほうが優位であると報告されています。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診療の場面では、人工膝関節置換術(TKA)のあと、特に手術後48時間くらいまでの痛みをどこまで抑えたいか、そしてオピオイド(麻薬性鎮痛薬)の量をどれくらい減らしたいか、といった点を考えます。
そのうえで、こうした早い時期の痛みの軽減やオピオイド使用量の削減を重視する場合には、LIA(局所浸潤鎮痛)にACB(内転筋管ブロック)を併用する方法を、ひとつの選択肢として検討することになります。
参考文献
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Comparative Efficacy of Adductor Canal Block in Total Knee Arthroplasty: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41533004/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

