この記事の要点
- 日本語タイトル:開頭術後の早期リハビリは合併症を減らせるか?
- 英語タイトル:Effectiveness and safety of early rehabilitation in the prevention of postoperative complications after craniotomy: a systematic review and meta-analysis.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーション(Rehabilitation、手術や病気のあとに体の機能を回復させるための訓練)や整形外科の診療の場面でもよく関わってくるテーマです。できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の外来でお話しするような形で説明していきます。
研究の背景・目的
開頭術(Craniotomy、頭の骨を一部開けて行う脳の手術)のあとには、傷口からの感染(ばい菌が入ること)や出血、手足のまひや言葉の障害といった機能障害など、いろいろな合併症が起こりうることが問題になってきました。これまでは「しばらくベッドでじっと安静にしておく」という長期安静が一般的でしたが、手術後に早めにベッドから起きて動き始める「早期離床(Early Mobilization、術後早い時期から体を起こして動き始めること)」が本当に効果的か、安全かについては、はっきり示した研究結果があまりありませんでした。
調査の方法(対象など)
この研究では、成人の開頭術後の患者さんを対象にしました。手術のあと、比較的早い時期からリハビリテーションを始めたグループと、少なくとも48時間(2日間)以上はベッドの上で安静にして過ごす、従来どおりの管理を受けたグループを比べています。こうした比較を行う研究を、ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial、患者さんをくじ引きのような方法でグループに分けて、公平に治療法を比べる研究)といいます。今回の論文では、複数のランダム化比較試験を集めて整理する「系統的レビュー(Systematic Review、決まった方法で文献を集めて評価するまとめ方)」と、その結果を統計的にまとめ直す「メタ解析(Meta-analysis、複数の研究結果を合算して全体としての傾向を調べる方法)」を行っています。
研究の結果
早期にリハビリテーションを始めたグループでは、手術後の合併症が起こる危険性が、おおよそ半分くらいまで減っていました。一方で、病気が再発する割合や、最終的な機能の回復具合(機能転帰)については、従来の管理を受けたグループとの間に、はっきりした差はみられませんでした。このことから、早期リハビリテーションは、全体として大きな安全性の問題はなさそうだと考えられています。また、相対リスク(Relative Risk、ある治療でどれくらい危険が増えたり減ったりするかを示す指標)やオッズ比(Odds Ratio、別の計算方法で危険の増減を表す指標)の信頼区間(Confidence Interval、統計的に「この範囲に本当の値がありそうだ」と考えられる幅)を見ても、重大な害が強く疑われるような結果にはなっていませんでした。
結論:今回の研究でわかったこと
今回まとめられた研究結果からは、開頭術後に早めにリハビリテーションを始めることで、手術後の合併症を減らしつつ、安全面もある程度保てている可能性が高いと考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診療の場面では、開頭術後の患者さんに対して、一律に長い期間ベッドで安静にしてもらうよりも、患者さんの状態や手術内容などの条件をきちんと確認したうえで、計画的に早期離床を進めていくことを検討する価値があると考えられます。ただし、今ある研究の数や質には限りがあるため、どの医療機関でも同じようにすぐ取り入れられるとは言い切れません。各施設ごとに、安全面に十分配慮しながら慎重に導入し、その結果を確認していくことが大切とされています。
参考文献
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Effectiveness and safety of early rehabilitation in the prevention of postoperative complications after craniotomy: a systematic review and meta-analysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41518567/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

