この記事の要点
- 日本語タイトル:痙性脳性麻痺児のバランス訓練はどの不安定面が足関節固有感覚改善に有効か?
- 英語タイトル:Effects of balance training on different surfaces on ankle proprioception and functional balance in children with spastic cerebral palsy: a single-blind randomized controlled trial.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーション(機能回復を目指す訓練)や整形外科の診療で、日常的によく問題になるテーマです。
医学用語も出てきますが、できるだけかみくだいて、外来でお話しするようなイメージで説明していきます。
結論からお伝えします(今回の研究でわかったこと)
5〜10歳の「痙性脳性麻痺(けいせい のうせい まひ:脳の障害が原因で、筋肉のこわばり〈痙性〉や動かしにくさが続く状態)」のお子さんを対象にした研究です。
8週間にわたって、不安定な板の上で行うバランス訓練を続けたところ、どちらのグループでも「バランスをとる力」は良くなりました。
一方で、「足関節固有感覚(そくかんせつ こゆうかんかく:足首の関節が今どの向き・どの位置にあるかを、目で見なくても感じ取る感覚)」については、「表面が粗い(ざらざらした)板」で訓練したグループだけで、はっきりとした改善がみられました。
この結果は何を意味するのか
この研究のやり方について説明します。
5〜10歳の痙性脳性麻痺のお子さん16名を、くじ引きのような方法で2つのグループに分けました(ランダム化といい、どちらのグループになるかを公平に決める方法です)。
どちらのグループも、週2回・8週間にわたって、ふだん行っている理学療法(Physical Therapy:筋力や関節の動き、バランスなどを改善するためのリハビリ)を受けたあとに、10分間のバランスボード訓練を追加しました。
このバランスボードには「滑らかな面」と「粗い面」があり、一方のグループは滑らかな面、もう一方のグループは粗い面を使って訓練を行い、その効果を比べました。
注意点・限界
バランス能力の評価には、いくつかの検査が使われました。
「小児用バランススケール(Pediatric Balance Scale:立つ・座る・向きを変えるなど、日常動作に近い動きでバランスを点数化する検査)」、「Functional Reach Test(ファンクショナル・リーチ・テスト:立った姿勢からどこまで前に手を伸ばせるかでバランスをみる検査)」、「Single Leg Stance Test(シングル・レッグ・スタンス・テスト:片脚立ちがどれくらい保てるかをみる検査)」です。
これらの検査の結果は、滑らかな面で訓練したグループも、粗い面で訓練したグループも、どちらも有意に(統計的に意味があると判断できる程度に)改善していました。
つまり、「不安定な面を使った訓練そのもの」が、機能的なバランス能力の向上には役立っていたと考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
痙性脳性麻痺のお子さんにバランス訓練を行うとき、どのような不安定な面を選ぶかは、リハビリの内容を考えるうえで一つのポイントになります。
今回の研究結果からは、「粗い不安定面(ざらざらした面のバランスボードなど)」を使うことで、バランス能力の向上だけでなく、足関節固有感覚(足首の位置や動きを感じ取る力)の改善も期待できる可能性が示されています。
実際のリハビリでは、お子さんの状態や安全性を確認しながら、担当の理学療法士や主治医と相談して、どのような道具や訓練方法を選ぶかを決めていくことが大切です。
参考文献
-
Effects of balance training on different surfaces on ankle proprioception and functional balance in children with spastic cerebral palsy: a single-blind randomized controlled trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41485031/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

