この記事の要点
- 日本語タイトル:前十字靭帯再建後のリハビリにプライオメトリックトレーニングは必要か?
- 英語タイトル:Effect of Plyometric Training on Neuromuscular Function after Anterior Cruciate Ligament Reconstruction: A Meta-analysis of Multi-dimensional Outcomes.
ここで取り上げるのは、前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:膝の中で太ももの骨とすねの骨をつなぐ靭帯)を再建する手術のあとに行うリハビリについての話です。整形外科やリハビリの現場でよく問題になるテーマで、日常診療でもよく出てきます。できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の外来でお話しするような形で説明していきます。
結論からお伝えします(今回の研究でわかったこと)
プライオメトリックトレーニング(Plyometric Training:ジャンプや素早い切り返し動作などを使って筋肉と神経の反応を鍛えるトレーニング、以下「PLYO」と表記)は、前十字靭帯再建術(Anterior Cruciate Ligament Reconstruction:ACLを再建する手術、以下「ACLR」と表記)のあとに行うと、太ももの前側の筋肉である大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の筋力と、左右の脚のバランスの差を「中くらいの程度」で良くする可能性があるとされています。一方で、「自分で感じる膝の使いやすさ」や、「動きながらのバランス能力」については、はっきりした効果がそろっておらず、人によって合う・合わないがあるトレーニングと考えられます。そのため、誰にでも一律に行うというよりは、対象となる人や目的をよく選んで取り入れる方法と位置づけられます。
この結果は何を意味するのか
筋力について:PLYOをリハビリに追加すると、大腿四頭筋のピークトルク(Peak Torque:筋肉が一番強く力を出したときの力の大きさを機械で測った値)が、平均で12.06ポイントだけ良くなっていました(95%信頼区間 3.65–20.57 という範囲で、この中に本当の値が入っていると考えられています)。このことから、PLYOは「筋力アップを目指すときに、通常のリハビリに加えて行う補助的なトレーニング」として使える可能性があると考えられます。
注意点・限界
左右差について:左右の脚の力や動きのバランスを表す指標として、下肢対称性インデックス(Limb Symmetry Index:左右対称性指標、左右の脚の機能がどれくらいそろっているかを%で表したもの)が使われています。PLYOを行ったグループでは、この指標が平均で8.2%良くなっていました(95%信頼区間 0.51–15.89)。この数値の改善により、複雑なジャンプ動作や、方向転換を伴うような動きの場面で、有利になる可能性があると考えられます。ただし、「可能性」の段階であり、すべての人に同じような効果が出るとは限らない点には注意が必要です。
実際の診察ではどう考えるか
ACLR後のリハビリでは、まず基本的な筋力トレーニングや可動域訓練(関節がしっかり動くようにする練習)を行い、そのうえでPLYOを「筋力の最終的な仕上げ」として、また「左右差をできるだけ小さくするための仕上げ」として位置づけていく考え方がとられています。一方で、「膝をどれくらい安心して使えると感じるか」といった主観的な機能や、「片脚立ちや動きながらのバランス能力」については、PLYOだけでなく、他の神経筋トレーニング(Neuromuscular Training:筋肉と神経の連携を高めるトレーニング)も組み合わせて、その人のスポーツ種目や生活スタイル、回復状況に合わせて個別に調整していくことが大切とされています。
参考文献
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Effect of Plyometric Training on Neuromuscular Function after Anterior Cruciate Ligament Reconstruction: A Meta-analysis of Multi-dimensional Outcomes.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41479179/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

